こんにちは、MATTU(@sunmattu)です。
アメリカでSurface Pro Xが2019/11/5に発売されています。
端末筐体がよりスタイリッシュになり、LTE常時接続、ARMの採用、省電力、Surfaceペンの収納改善など、魅力に思えることは非常に多そうに思えます。
ただ、アメリカの大手テック系メディアのレビューをななめ読みすると、なかなかに辛辣なコメントも書かれており…
はたして、Surface Pro Xの出来栄えは、どうなんでしょうか…
今回は、(英語で読むのも大変だと思うので)各社のレビューを項目別に整理していこうと思います。
各レビューはアップデート前のものとなっているので、特にバッテリー持ちや安定性は変わっている可能性があります。
アップデートについて詳しくはこちらから(Microsoft(US))
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このレビューはアメリカの大手テック系メディアのレビューを簡単にまとめたものです。
Surface Pro Xは母艦PCとして使うより、iPad Proなど持ち運び用のタブレットとしての用途で想定され開発されているので、
「使用シーンによってかなり評価が変わる」
と思っていただければと思います。
(テック系メディアの記事は、主に今までのSurface PCなどと比較した比較した記事が多く、開発・使用コンセプトとはずれているような気がしています)

Surface Pro X、ハードウェアのつくりは?
筐体デザインについては、Surfaceシリーズの中でも最もベゼルの狭いデザインであることもあり、スタイリッシュ・先進的だ、などと、肯定する意見が多いようです。
Engadgetでは、「エレガントでモダンなデザイン」「素晴らしく、旧時代的なSurface Pro 7とは異なりSurface Pro Xを見る喜びを見つけました」と評しています。
CNNでは、「未来的なSurface、フラッグシップWindowsタブレットのように感じる」と、薄さ・軽さを高く評価しています。
一方で、カラーはマットブラックのみで、「指紋の恐怖に注意」と、指紋が非常につきやすいことを示しています。
GIZMODOでは、「マントの戦士(バットマン)のような外観と感触を持っている」と、Good Pointの一つとして挙げています。
Surface Slimペンの充電スロットは、大きな改善
また、Surface Signature Keyboardに新たに搭載されたSurfaceペン(Surface Slimペン)の充電スロットについても、各社評価が高いです。
Petriでは、「ペンを充電スロットに戻しても磁石で正しい方向にひっくりかえされるので、間違った方向に入れられて充電できない、なんてことはありません。この変更は小さなものですが、ユーザーに大きな影響を与えそうです。いざ、ペンが必要となったときに無くしてしまっている、という状況をなくすこともできます」といっています。
Surface Slimペンは、従来のSurfaceペンとほぼ同じ!!
Surface Slimペンの使い心地は、THE VERGEでは「形状がスリムなので、数時間以上利用すると少し疲れるかもしれない。筆圧・角度検知が搭載され、ペン先と反対側の先端が消しゴム機能、ペンの持ち手に2つのボタンもあり、従来のSurfaceペンと同じくすべての機能を利用できる」としています。
Surface Pro X用のSurface SlimペンとSignature Keyboardは、アメリカのAmazonから直輸入できます。
※先日の日本でのSurface Pro Xお披露目会の際には、USキーボード版は日本では発売しないという話もあったようなので、USキーボード好きユーザーはアメリカからの輸入をお勧めします。
「ARM」搭載が、ソフトウェアの使い心地にどこまで影響を与えているか?
今回のSurface Pro Xの一番の懸念点は、「Microsoft SQ1」というSnapdragon準拠のARMチップです。
Surface Pro Xアプリの互換性については、Microsoftのドキュメントページにも注意書きがありますが、
- ハードウェア、ゲーム、アプリのドライバーは、Windows 10 ARM ベースの PC 向けに設計されている場合にのみ機能
- 64 ビット (x64) のアプリは動作しません
- 一部のゲームは動作しません
など、制約が多いのが特徴です。


なかでも、64ビット(x64)アプリが動作しない、というのは、64bitへの過渡期であるWindows界隈において非常につらいところかと思います。
ARM用に設計された64ビット(ARM)アプリの場合は利用可能です。
AdobeをはじめとするWindowsのソフトを開発する各社が、ARM版64ビットアプリを開発するかどうかにかかっている気もします…
Adobeは10/2のSurface発表会にて「クリエイター系ツールをSurface Pro Xに対応させたい」と述べており、時期は未定ながら対応する考えを見せています。
(参考:PC Watch「Adobe、Surfaceの発表会でWindows版Frescoの提供意向を表明」)
GoogleもChromeのWindows 10 ARM版を2019年後半にリリース予定という意向を(2018年時点では)示しているので、早期に出るかはわかりませんが動きが出ることは間違いないでしょう。
実際のアプリの使い勝手は…
やはり、Surface Pro XをPCという土台で見ると、現時点ではつらいようです。
CNNでは、「以前のARMベースのデバイスと異なり、Surface Pro Xはほとんどのタスクで驚くほどスムーズ」としています。
ARMに最適化されたものであれば、スムーズなのでしょう。
しかし、32ビット(x86)アプリについてはエミュレーションでの動作となります。
「ARM64をサポートしていないアプリは顕著なパフォーマンスヒットが発生するため、インストールして実行はできますが、快適な動作・応答からは少し遠い」(GIZMODO)とのこと。
「Windowsストアにある64ビットアプリのNewton Mailを使用していますが、ストアのアプリにアクセスすると、インストールボタンがグレー表示されますが、理由は書かれていません。」(Petri)
ということで、Microsoft Store上のアプリでも対応していないアプリがあるようで、使いたいアプリがSurface Pro XなどのARM版に対応しているかどうかを、買う前にチェックしにくいのはちょっときついかなぁ、とも思います。
ただし、PCとしてとらえる場合と、iPadなどのタブレットの競合端末としてとらえる場合とでは、印象は変わる気がしています。

Surface Pro Xに起きる不具合
更新プログラムが頻繁に出ているようなので、すぐアップデートがかかりそうですが、発売日(11/5)時点でSurface Pro Xで生じている(とレビュー記事上で公表されている)不具合は…
- 画面の明るさ調整をしようとして、パネルが反応せず、ハング。再起動で復帰。数日で2回(Engadget)
- PCを持ち運んで帰ってきたら、ブルースクリーン(Engadget)
- ベンチマークテストをGoogleドライブからダウンロード中、ページ読み込み不可。EdgeでYouTube動画を見ようとしたが読み込まれない。ブラウザ再起動で復帰。(Engadget)
- スリープから復帰したあとの壁紙が、かなり高い倍率で拡大されている状態で表示される(Petri)
Engadgetのレビューは、どちらかといえば不具合に怒っている様子です。
まあ、Windows PCを使っていればだれでもブルースクリーンが(昔に比べれば頻度が少なくなったとはいえ)表示されることはありますが、レビュー端末で試用期間短いのに複数の不具合が出てくると、ちょっとびっくりしますよね…
処理の問題が大半だと思われるので、更新プログラムで早めに対処していただければ嬉しいですね。
11/6にさっそくアップデートがかかっているようですが、どれぐらい改善しているのか気になります。
アップデートについて詳しくはこちらから(Microsoft(US))
ARM版の一番のメリットはLTE常時接続と省電力性。実際のバッテリー持ちは?
ソフトウェアに互換性の問題が付きまとうARM版の「Surface Pro X」ですが、メリットとして挙げられていたのはLTEに常時接続していても、省電力でパフォーマンスを期待できる、という点。
Microsoftが公表したバッテリー持ち時間は標準で13時間ですが、実際のところはどうなんでしょうか?
※いずれも11/6アップデート前の測定と思われます。
- 4日間、それぞれ5~6時間利用可能(The VERGE)
- Surface Pro Xは11時間45分。Microsoftの見積もりは正確。iPad Proは11.5時間、Surface Pro 7は8時間。(Engadget)
- 数アプリをWi-FiとLTEで切り替えながら利用して、12時間利用可能。(CNN)
- 最高輝度で使用、Office Suiteを使い、Spotifyをバックグラウンドで利用して、7時間。(LTEに切り替わることもしばしば)(Petri)
- ARMに最適化されたEdgeブラウザでビデオランダウンテスト(Wi-FiでYouTube再生)すると、11時間28分。Chromeで同じテストすると7時間43分。(GIZMODO)
まあ、普通のPCでも、メーカー発表のバッテリー持ち時間に対して、実際は半分も持たないPCなんてゴロゴロいるので、Surface Pro Xの持ち時間13時間に迫る使い方もできる、というのはうれしいことなのかもしれません。
ただ、バッテリー持ち時間に最も影響するのは「ARMに最適化したアプリ」を使うかどうか、ということのようですね。
EdgeブラウザとGoogle Chromeでの持ち時間の差が予想以上に大きいので、挙動・電池持ちの両方の意味で、やはりエミュレーションで動く32ビット(x86)アプリに限界があるのでしょう。
64ビット(ARM)アプリが各社どれだけ揃うかは、Surface Pro XなどARM版のWindows PCがどれだけ普及するかにかかっていると思います。
なお、ChromeのWindows 10 ARM版は2019年後半にリリースされる、という情報があります。
(参考:マイナビニュース「ChromeのWindows 10 ARM版は2019年後半にリリース予定」)
※これは2018年の情報で、2019/11/7現在まだリリースされていません。
また、現在のWindows 10の標準ブラウザである「Microsoft Edge」のChromiumベースの新バージョンは、2020年1月15日にリリースされると発表がありました。
(参考:Microsoft「Introducing the new Microsoft Edge and Bing」)
あくまで比較対象はタブレット。iPad Proと比べて、買う価値はあるのかどうか?価格とスペックを比較
Surface Pro Xは、PCという土台で他PCと比較するべき機種でないと思います。
「Surface Pro Xが欲しい!!iPad ProよりSurface Pro Xに注目するワケ」でも述べたように、利用シーンは持ち運び用のポータブルPC・タブレット的な使い方のほうがマッチしているためです。
項目 | Surface Pro X | iPad Pro(12.9インチ) |
---|---|---|
大きさ | 287x208x7.3mm | 280.6×214.9×5.9mm |
重さ | 774g | 633g(LTE版) |
ディスプレイ | 13インチ (3:2,2880×1920) | 12.9インチ (4:3,2732×2048) |
CPU | Microsoft SQ1(Snapdragon 8cxベース) | A12X Bionic |
メモリ | 8GB/16GB | 6GB/8GB(1TB版のみ) |
ストレージ | 128GB(8GB版のみ),256GB, 512GB(16GB版のみ) | 64GB,256GB,512GB,1TB |
LTE | 〇 | 〇(LTE版) |
端子 | USB-Cx2 Surface Connectポートx1 Surfaceキーボードコネクタポート | USB-Cx1 Apple Pencil充電用磁気コネクタ Smart Connecter |
メインカメラ | 10MP | 12MP |
フロントカメラ | 5MP(Windows Hello顔認証対応) | 7MP(Face ID対応) |
バッテリー | ? | 36.71Wh |
駆動時間 | 最大13時間 | 最大9時間 |
スペック的には十分戦えそうです。
iPad Proのほうが利用できるアプリは圧倒的に多いでしょう。
Surface Pro Xは一応PC向けのOSでPC同様の操作ができることや、「フル機能のOffice(Word, Excel, PowerPointなど)」をどこでもつかえるというメリットがあります。
(Officeをがっつり使っている私は、このメリットは見逃せません)
あとは、問題は「価格」とのバランスです。
価格はSurface Pro X日本版が執筆時点で価格も公表されていないため、アメリカ版の価格で比較しています。
モデル | Surface Pro X | iPad Pro(12.9インチ,LTE) |
---|---|---|
最小スペック(単体) | 8GB-128GB $999(108,566円) | 4GB-64GB $999(108,566円) |
最小スペック +キーボード・ペン | 8GB-128GB $1268.99(137,907円) | 4GB-64GB $1327(144,271円) |
256GBモデル(単体) | 8GB RAM $1299(141,168円) 16GB RAM $1499(162,903円) | $1299(141,168円) |
256GB +キーボード・ペン | 8GB $1568.99(170,510円) 16GB $1768.99(192,244円) | 4GB-256GB $1627(176,814円) |
本体の価格はほぼ同等かと思います。
キーボードとペンの別売り価格が、Surface Pro Xのほうが安いので、全部そろえるとSurface Pro Xのほうがちょっとだけ安く買えるのかな、と思います。
ただ、メモリ8GBと16GBの選択肢を見てしまうと、思わず16GBに行っちゃいますよね…
Surface Pro Xの16GBの最小スペックはストレージ256GBなので、全部そろえると20万円弱します。
Surface Pro Xの日本版の価格はちょっと怖いですね…
Office 2019が標準バンドルで発売されたら、その分の価格も上乗せされるので、もう少し上がってしまうのかも……。
「戦略的に据え置きます」みたいな配慮があったらうれしいですが……。
iPad Proなどの「タブレット」と比較して、買う価値があるかどうかは、あなたの用途次第
Surface Pro XはOSとしてWindows 10 Homeを載せていることもあり、レビューした各社はやはりPCと比較しています。
仕方ないことではありますが、PCと比較すれば酷評になるだろう、というのはMicrosoftもわかっていたんじゃないかと思います。
ここが、Appleとのアピール力の差なのかもしれません。
最初から不自由だったiPadやiPad Proは、iPhoneからの拡張という形をとることで「機能の伸び」をPR。
それでプラスのイメージを植え付けていたんじゃないかと思います。
むしろ、クリエイティブな(Adobe IllustlatorやPhotoshopなどを駆使するような)ユーザー以外の一般のユーザーは、Surface Pro Xのほうが使いやすそうな気がして仕方ないです。
個人的には、特に出張の多い、出先で使うことの多い方、ノマドワーカーなどは、非常に重宝しそうな気がします。
(まだ入手できていないので、想像でしかないですが)
私も、入手出来次第、レビューしますよ!
Surface Pro Xの実機レビュー
漆黒のかっこいいSurface Pro Xは、持ち運びPCとして使い心地も快適です。
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